みなし解散からの会社継続の登記

高野義憲

会社の印鑑証明を取りに法務局へ行ったところ、取れないという事だったので、会社の登記事項証明を取ってみると、解散の登記(みなし解散登記)がされているとの問い合わせをいただきました。 登記事項証明には、「平成27年12月15日会社法第472条第1項の規定により解散」と登記されていました。この会社は平成12年に設立し、平成14年に役員変更などの登記をしたのを最後に、約13年間、一切登記がなされていない状態でした。
12年以上の間、登記がされていない株式会社については、法務局はいったん会社または代表者宛てに、もう活動していないのであれば解散登記をしますよ、という通知を送り、返答がなければ解散登記をすることが可能になっています。これを「みなし解散登記」といいます。定期的に調査して、該当する会社に対して一斉に行っている様です。

誠に申し訳御座いませんが、現在当事務所は人手不足のため、会社・法人登記については、ご紹介以外の新規の受付を控えさせて頂いております。
以下は一般的な手続きのご説明として、ご参考頂ければ幸いです。 

みなし解散からの会社継続の登記

みなし解散登記がされても、その後3年以内であれば、株主総会を開いて会社継続の決議をしたうえで、会社復活の登記をする事が可能です。
今回相談頂いた会社も、実際何年もの間休眠状態にあったのですが、この度活動を復活しようとしていました。活動を復活するにあたって会社の印鑑証明書が必要になり法務局へ取りに行ったところ、解散登記がされていてびっくり、もとの状態に戻したいとの事で、みなし解散からの会社継続登記をすることになりました。

もともとの役員の構成は、下記のABCDで、再開後も変更なしです。

  取締役 A、取締役 B、取締役 C
  代表取締役 A
  監査役 D             

みなし解散によって、取締役、代表取締役、取締役設置会社の事項は、職権で抹消されて下線が引かれていました。解散すると、取締役は自動的に退任になり、代わって清算人が登記されるのですが、法務局が登記していて清算人は選任されていないため、まだ登記されていない状態です。監査役は清算人を監査するため退任にはなりません。 

今回、登記申請をする内容は、下記の4つです。

1.平成27年12月15日清算人および代表清算人就任
2.会社継続
3.取締役、代表取締役、監査役の変更(全員が再任)

登録免許税は、合計で4万9,000円になります。内訳は、清算人就任9,000円、会社継続3万円、取締役等の変更1万円です。

会社継続の具体的な登記手続

1.まず、法定清算人の就任の登記ですが、解散した場合に誰が精算人になるかという規定が定款に無く、(みなし)解散した時に清算人を選任することもしていませんので、法定清算人として、前任の取締役A、B、C全員を清算人、代表取締役Aを代表清算人と登記します。
ここで、定款に清算人の規定が無いことを証明するため定款が必要になります。今回の会社の場合、定款をお持ちでしたので、定款をコピーし毎ページに会社代表印の割印、最後のページに「本書は平成27年12月15日解散時の定款に相違ありません」という記載をして、定款を添付しました。

なお、代表取締役として登記されていたAの住所が代表清算人就任時の現在の住所と異なっていても現在の住所で代表清算人の登記が可能です。代表清算人は住所も登記事項となります。法定清算人ですので、選任決議、就任承諾書などは必要なく清算人の登記を入れます。 

2.次に、株主総会を開催して、会社継続、取締役等の再任の決議をします。定款も会社法適用前の定款であった為、会社法に沿った形の定款に変更する定款変更決議も事案として行いました。

・株主総会議事録議案
  平成年月日(総会により定めた日)会社継続
  取締役の選任決議(定款で代表取締役は取締役会の決議により選定する旨の定めがある)

また、株主総会に続き、取締役会により、代表取締役の選定をします。

・取締役会議事録議案
  代表取締役の選定決議

※取締役会議事録には、出席取締役全員の個人の実印の押印と印鑑証明書が必要となります。清算人として一度登記が入る為、取締役の再任の扱いにはならない為です。

登記申請の添付書類及び準備書類

 ・定 款
 ・株主総会議事録
 ・取締役会議事録
 ・取締役の就任承諾書(個人の実印で押印)
 ・代表取締役の就任承諾書
 ・A、B、Cの印鑑証明書
 ・改印届出書(Aが代表清算人就任時のもの)
  ※印鑑カード継続として提出(印鑑カード番号は記載不要)
 ・改印届出書(Aが代表取締役就任時のもの)
 ・印鑑カード申請書(準備書類)
  ※印鑑カードは会社継続をした場合新たに作成する必要があります。

なお、みなし解散から会社継続の登記を入れると、登記懈怠に対する過料の通知が裁判所から送られてくる可能性があります。

 

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