遺言のすすめ

高野義憲

高齢社会の到来に伴い、遺言書を作られる方も増えているようです。

自宅不動産は同居のお子様に相続させてやりたい、世話になっている義理の娘にも財産を遺したい、子供がいないため、後に妻と自分の兄弟間で争いが生じないようにしたいなど、理由は様々です。

自分のお考えを遺しておけば、相続手続もスムーズに行うことが可能になります。
また、法的な効力はありませんが、「付言」として、遺言書に自分の気持ちや希望など、親族の方へのメッセージを書いておくこともできます。

まだ元気なうちから遺言について考えることに抵抗を感じる方も多いかとは思いますが、高齢になってからの遺言は、後に、認知症などにより判断能力に欠けた状態で作られたものではないかとの疑いが持たれて裁判になるケースもあります。

一度遺言書を作っても、新たな遺言によって何度でも修正することができますので、思い立った時に作っておくのもよいかと思います。

ただ、遺言の内容によっては、後に、相続人に最低限保証された「遺留分」によって覆されるなどの問題を生じることもありますので、注意が必要です。

なお、公証人の先生にお伺いしたところ、やはりここ数年で公正証書遺言の作成はかなり増えているそうです。

ご本人が寝たきりの状況などで公証役場へ行けない時は、公証人が病院や自宅などに来て公正証書遺言を作成できるのですが、すでに意思表示が困難な状態で作成できない場合もあるそうです。
遺言書の作成が必要な方は、やはり元気なうちに作成しておくことが必要だとおっしゃっていました。

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遺言についても、ご相談は無料です。
海老名市、座間市、綾瀬市、大和市、厚木市、相模原市の方はもちろん、神奈川県全域大丈夫です。
 

遺言書を作っておいた方が良いと考えられる場合

将来ご自身が亡くなられて相続が開始した場合、特に遺言書が無くても、配偶者やお子様など相続人の全員で話し合って、どの様に分けるか決める事ができます。

ただし、話し合いにするとご自身の意図している様にはいかないだろうと予測される場合、話し合いがこじれる可能性ある場合、話し合いじたいが難しいであろう場合など、遺言書を作っておけばスムーズにできたのに、作っていなかったために相続手続が困難になってしまう場面も往々にしてあります。

以下の場合には、遺言書を作っておく事をお勧めします。
 

① 自宅は同居している子供に相続させたい(特定の者に特定の財産を相続させる)

ご自身や同居の子自身は当然に家と土地をその子が相続するものと考えていても、他の子(相続人)はそうは考えていないかもしれません。
 

② 自分の世話をしてくれた、義理の娘にも遺産を遺したい(相続人以外の者への遺贈)

息子の嫁は、どれだけ世話になっても相続人では無いため、財産を相続させることはできません。

ただし、亡くなった時に贈与するという「遺贈」はできます。
税法上も、遺贈は贈与ではなく相続税になり、相続人よりも2割加算で相続税がかかるという扱いになっています。
 

③ 子・孫がおらず、親・祖父母は既に他界している

配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合です。
兄弟姉妹が多いとなかなか協力が得られなかったり、連絡が取れない方がいたりと、遺言書が無いと、遺産分割に時間がかかることも結構あります。

なお、兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者が全財産を取得する内容でも後に覆されることはありません。
 

④ 長年交流のない前妻の子や婚外子がいる

遺言書、とくに公正証書遺言があると、各種の相続手続は全て、受取人とされている者だけで進めることができます。

遺言書が無いと、前妻の子や婚外子の協力がなければ相続手続を進める事はできません。長年交流が無ければ、遺言書の有無で大きく違ってきます。
 

⑤ 相続人の一人の行方がわからない

上記の通り、遺言書、とくに公正証書遺言があると、各種の相続手続は全て、受取人とされている者だけで進めることができます。

遺言書が無いと、行方不明の相続人を探し出すか裁判所の手続を踏むかしないと相続手続は進められません。
ここでも遺言書の有無で大きく違ってきます。
 

遺言書でできること

遺言できる事項は法律で決められています。

大きく分けて身分に関する事項と財産に関する事項(相続関係も含む)があります。
それ以外の事項を記載しても「付言事項」といって、遺言者の希望や考えを参考として記載するという意味を持つだけです。

例えば、「自分が亡くなった後、自宅には(今は別居している)長男が住むように」と記載しても長男を強制的に引っ越させる事はできません。
あくまで希望です。

以前、遺言書に自分が亡くなったら甥を養子にすると書けるか聞かれた事がありますが、養子縁組は法律上、生前に相互の合意が無いとできませんので、遺言書に記載することはできません。

以下に、遺言できる事項についてご案内します。
 

身分に関する事項

・婚外子(非嫡出子)の認知
婚外子(事実婚や愛人の間の子、法律上は非嫡出子といいます)は、生まれると同時に母親との親子関係は生じますが、父親とは、父親が認知するか、裁判で認めてもらうかしなければ、当然には親子関係は生じません。
親子関係が生じなければ相続人にもなりません。

生前にはどうしても認知できないが、いくらかでも相続させてやりたいという場合に、遺言で認知するという方法があります。
遺言書に記載しておくと、遺言者が亡くなると同時に認知して、認知された者が相続人になります。
 
・未成年後見人の指定
子が未成年の場合、片親が亡くなっても、他方の親が親権者ですが、もともと親権者が1人であった場合は、親権者がいなくなってしまいます。
その場合は親族の誰かが家庭裁判所に申立てをして親権者に代わる「未成年後見人」を選任してもらう事になりますが、あらかじめ遺言で未成年後見人になる者を指定しておけば、家庭裁判所の手続は不要になります。
 

財産に関する(相続を含む)事項

・相続に関する事項
これが最も多い遺言内容だと思います。

自分の財産を相続人たちにどの様に相続させるかは、まず第1に遺言者の意思が優先されます。
相続人それぞれの相続分(割合)を決める事ができます。

奥さんは1/4で長男は1/2、次女は1/4と遺言書に記載すれば、法定相続分よりのこの割合が優先されます。
また、割合ではなく、土地建物は奥さんで○○銀行の預金は長男、△△銀行の預金は次女という様に特定の財産を示して遺産分割の方法を指定する事もできます。
不動産は売却してその売却代金を3人で1/3ずつ分けるといった事もできます(売却手続きをする遺言執行者を指定しておく必要があります)。
 
・遺贈
相続人以外の第三者に財産を譲ることもでき、「遺贈」といいます。

相続財産の1/3を遺贈するという事も(包括遺贈といいます)、相続財産のうちで不動産だけは遺贈するという事も(特定遺贈といいます)できます。
また、甥っ子に遺贈する代わりに遺された妻の介護をすることという様な負担付遺贈も可能です。
 
・相続人の廃除
「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」は、家庭裁判所に相続人廃除の申立てをして、その者から相続権を剥奪させることができます。

生前に自分で申立てる事もできますが、遺言しておくと、亡き後に遺言執行者が申立てる様になります。

なお、廃除の対象になるのは、遺留分を持たない相続人で、自分の子・孫・親です。
自分の兄弟姉妹は遺留分がありませんので、遺言書で別の者に相続・遺贈させるとしておけば、相続することもないため、廃除する必要もありません。
 
・遺言執行者の指定
遺言書で、上記の様に、遺贈や不動産の売却を伴う遺産分割方法の指定をしたり、相続人廃除をする場合には、実際に手続きを行う「遺言執行者」が必要になります。

遺言に記載がなければ、受遺者などが申立をして家庭裁判所に選任してもらうのですが、遺言書であらかじめ指定しておけば、その必要はなくなります。
 
・遺留分減殺方法の指定
遺留分は遺言でも侵せないものなので、遺留分じたいを失くす事はできませんが、遺留分減殺の方法(順番)を遺言で指定しておく事はできます。

例えば、遺留分減殺は、まず子の相続財産、その次に妻の相続財産の順で行う様にといったり、銀行普通預金、定期預金、証券の順で行う様にといったりできます。

ただし、民法に定められた「贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。」などに反する事はできません(まず贈与から減殺するというように)。

 

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