戸籍・除籍の収集

高野義憲

不動産の相続登記や、銀行・証券会社などの相続手続には、戸籍謄本等が必要となります。

単に、亡くなられた方の死亡した記載のある戸籍だけではなく、誰が相続人になるかを確定させるため、亡くなられた方の出生まで遡って、改製原戸籍や除籍謄本などを集める必要があります。本籍が何度か変わっている方は、この収集が結構面倒な作業となっています。
 

戸籍・除籍・改製原戸籍とは

日本では、人は、生まれた時にまず父母の戸籍に入ります。
その後、結婚すると父母の戸籍を出て自分たち夫婦の戸籍を作ります。

また、引越しをして住所を移すと、必ずしも本籍は変える必要はないのですが、多くの方が本籍も新しい住所地に移します(転籍)。
転籍すると、それまでの役所の戸籍は除籍となり、新しい本籍地の役所で新戸籍が作られます。

そのようにして、人の一生の間に戸籍は何度か変わります。

また、転籍などが無くても、定期的に戸籍は改製されます。
今の戸籍はコンピューター化された横書のものですが、これは平成7年あたりから順次「改製」されたものです。
それ以前の戸籍は縦書きで手書きでした(この改製前の戸籍を、「改製原戸籍」といいます)。
縦書きの戸籍も、過去に何度か、改製されています(改製原戸籍の前のものも改製原戸籍といいます)。
 

なぜ出生まで遡って戸籍除籍を集める必要があるのか

ある時に子供が生まれたり、養子縁組をしたり、認知をしたりすると、その時の戸籍に記載されます。
その後、転籍や改製などで戸籍が変わった場合、子供や養子が戸籍から出ていない限りは新戸籍にも載りますが、すでに独立したり離縁したりで戸籍を抜けていれば、新戸籍には載ってきません。

なお注意すべきは、認知をした場合、認知した子が戸籍に入るわけではないため、認知した時点の戸籍に載るだけで、その後戸籍が変わると、認知は新戸籍には一切記載されません(認知された子の側の戸籍には、父としてずっと記載されますが)。

例えば、子供が5人いる方が亡くなった場合、戸籍のコンピューター化より前に、5人の子供がみんな結婚して戸籍を抜けていたら、亡くなった時点で戸籍を取ると、本人と奥様の2人しか記載されていません。
改製原戸籍を取ると、その当時まだ独立していなかった子供が記載されています。

以上のように、誰が相続人になるかを確定するためには、改製原戸籍や、転籍前の除籍、結婚前の実家の戸籍や除籍を集めてみないと分かりません。

不動産の相続登記や、銀行・証券会社などの相続手続には、必ずこれらの戸籍等の全ての提出を求められます。

なお、私の経験上も実際に、除籍謄本を集める中で、ご家族が知らなかった子を認知していた事が判明したり、前妻の子が一人いると聞いていたが実際には二人いたとか、養子もいた、といった事もありました。
その後遺産分割ができるまで、かなり時間がかかりました。
 

戸籍収集の方法

先祖代々ずっと海老名に住んでいて、戸籍もずっと海老名にあったという方であれば、海老名市役所へ行って「相続手続きで必要なので出生までの全ての戸籍を取りたい」と言えば、すぐに全て揃います(改製原戸籍や実家にいた時の戸籍除籍などで、出生まで遡ると、少ない方でも3~5通出てきます)。

しかし、長野県の実家の戸籍から、結婚して海老名で新戸籍を作ったという場合には、長野県の市役所で実家に居た時の戸籍(除籍)謄本を取る必要があります。

通常、郵送で請求します。
今はたいてい市役所ホームページで請求書をプリントアウトできます。
請求書と一緒に、手数料分の郵便小為替と、返信用封筒を入れて送ります。

海老名の前は名古屋に住んでいて本籍も移した、その前は実家の長野だけれど、実家も長野の前は広島に本籍があった、というように過去に何度か転籍をしていると、郵送を繰り返しながら過去に遡って集めていくことになり、結構大変で時間もかかります。

なお、司法書士は、不動産登記の依頼を受ければ、職権でこの戸籍収集を行う事ができます。

 

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