共有名義で相続した農地の分割
土地をいったんAB2人の相続人で持分2分の1ずつの共有名義に登記した後に、土地を2つに分割して、一方はAの単独所有、他方はBの単独所有に変更したいというご相談を頂く場合があります。
後の世代の事も考えると、一つの土地を共有しているより、2つの土地をそれぞれ単独所有にしておく方が良い場合も多いと思います。
この場合、まず土地家屋調査士に依頼をして、測量および分筆登記をします。分筆登記が完了して、AB共有の土地が2つになったところで、司法書士にて、「共有物分割」によって、一方はB持分をAに移転し、他方はA持分をBに移転することで、それぞれAとB単独所有にする事になります。それぞれの土地の持分を互いに交換しあうイメージです。
共有物分割は、互いに持分を交換しあうだけで新たに利益を得る訳ではないことから、譲渡所得税や不動産取得税が課税されないとされているそうです。
ただし、単純に面積を半分ずつで分筆した時に、片方が角地になり他方は奥まった土地になるといった時には、当然ながら角地の方が評価は高くなるため、差額について贈与と認定される可能性があります。その様な場合には面積に差をつけて評価が半分になるように分筆する必要があります。
市街化調整区域内の農地の場合
さて、ここまでの話は、その土地が、市街化調整区域内の田畑でないことが条件になります。
市街化調整区域内の田畑については、分筆後に、共有物分割をするためには農業委員会に申請して許可を得る必要があります。この許可を得るには、両当事者が一定の要件を満たす「農家」である必要があります。そのため、農業をしていた親の土地を長男と次男で相続したが、両者とも会社勤めで農業はしていないという場合には、共有物分割の登記はできない事になります。
その場合には、「共有持分を放棄する」事によって、一方はB持分をAに移転し、他方はA持分をBに移転することで、それぞれAとB単独所有にする方法を取る事になります。この場合には農地法の許可は不要です。
「共有持分放棄」は、登記では、「共有物分割」と同じ結果が得られるのですが、税務上は、互いに持分を贈与しあうものとして贈与税の対象になり、不動産取得税の対象にもなるため、注意が必要です。
市街化調整区域内の土地ですので、課税額もさほどの金額にはならないとは思いますが、場所によっては倍率評価が結構する所もあり、海老名市内の土地で贈与税・取得税あわせて、相互に20万円程(あわせて40万円程)になった場合もあります。