後見(保佐・補助)の申立手続
後見(保佐・補助)開始の申立は、本人の住所を管轄する、家庭裁判所で行います。海老名・大和・綾瀬は、関内にある横浜家庭裁判所。座間は相模原支部。厚木は小田原支部です。
申立にあたって、本人の戸籍謄本・住民票・後見登記されていないことの証明書、後見人候補者の住民票などが必要となります。戸籍などは、申立書作成を依頼する司法書士でも取得することができます。
※誠に申し訳御座いませんが、現在当事務所は人手不足のため、成年後見業務については新規の受付を控えさせて頂いております。
以下は一般的な手続きのご説明として、ご参考頂ければ幸いです。
後見開始申立ての前にご注意を~管理は生涯続く~
親が認知症になり、同居あるいは近くに居住している子が、これまで身の回りの世話や通帳などの管理をしてきたが、必要に迫られ、自分を後見人候補者として、後見開始の申立をすることが多くあります。その理由は様々です。
・普通預金口座の残高が少なくなり、定期預金口座を解約する必要があるものの、銀行から本人か成年後見人でないと解約はできないと言われた。
・施設への入所が決まったが、今後の資金に乏しく、親名義の不動産を売却する必要がある。
・これまで実家に通って世話をしていたが、実家を建替えて同居したい。銀行融資を申し込んだが、親名義の敷地に抵当権を設定するのに、本人ではその契約ができない。
などなど。
その場合に注意しなければならないことは、いったん後見人に選任されれば、本人が生存されている間は財産管理をし、年1回は裁判所に管理報告書を提出する必要があることです。定期預金の解約、不動産の売却や、抵当権設定が終われば終了するわけではありません。
この点について、不動産売却などの必要な行為が終われば、後見業務じたいも終了するとお考えの方が多くいらっしゃいます。しかし、一度後見人が選任されれば、本人が亡くなるまで財産管理は続きます。後見人に専門家(弁護士・司法書士など)が選任されれば、その間ずっと後見報酬も発生します。ご注意下さい。
後見開始申立ての前にご注意を~必ずしも親族が後見人になれるわけではありません~
親が認知症になり、子が自分を後見人候補者として後見開始の申立てをする上記の様な場合にもう1点注意が必要なのは、必ずしもその候補者(子)が選任されるとは限らない事です。
残念ながら過去において、子などの親族が後見人になった場合に、自分の為に使い込んでしまう事も多く発生してきたため、最近は、なるべく専門家(弁護士・司法書士など)を選任する傾向にあります。
各裁判所によって基準は違いますが、おおよそ、流動資産(預貯金などすぐ現金化できるもの)が1000万円を超える場合には、専門家が選任される可能性が高くなってきます。候補者ではなく裁判所に登録している専門家を後見人に選任する場合と、親族を後見人に選任したうえで専門家を後見監督人に選任する場合があります。
いずれにしても、専門家が後見人や後見監督人になると当然ながら報酬が発生します。報酬額は本人の財産額などに応じて裁判所が決めます。
なお、近年では、上記に加えて、親族を後見人に選任したうえで、後見制度支援信託を利用する方法が取られる事も増えてきています。
後見開始申立てにあたって準備する書類など
1.医師の診断書
まず重要なのが、医師の診断書です。家庭裁判所の所定の用紙がありますので、主治医の先生に書いてもらいます。
いろいろチェック項目などがあるのですが、その中に、「判断能力の程度□後見程度□保佐程度□補助程度」の欄があり、基本的にはそこにチェックされたもので申立てをすることになります。最終的に後見・保佐・補助のいずれになるかは、裁判所の判断ですので、申立てた後に変更する場合もありますが、裁判所も、主治医の記載は重視している様です。
また、診断書で、「本人の現在の状態」や「判定の根拠・説明」にある程度詳細な記載があれば、申立後に再度鑑定を行うことも少ない様です。鑑定を行うとなると、費用が5万~10万円程かかり、結構な時間もかかってしまうため、裁判所も、なるべくなら鑑定を行わないで済むように配慮して下さっています。
2.親族の同意書
次に重要なのが、親族の同意書です。ここでの親族とは、本人の相続人となるべき者(推定相続人)です。
後見申立をする際に、同居の親族の方が、自分を後見人候補者として申し立てることが多いのですが、将来相続財産となりうる本人の財産を誰が管理するのかは、推定相続人にとって重要であることから、申立書の候補者が後見人になることに同意します、という書面を添付することになっています。
誰が財産を管理するかや、管理の仕方について、親族間に争いがある場合は、申立書の候補者ではなく、第三者(弁護士や司法書士など)を後見人に選任する方向になります。申立書に、親族の同意書が一部でも無い場合は、第三者後見人の方向へ進む可能性が高くなります。
3.財産目録
申立の際に、財産目録を提出します。不動産、預貯金、株式、保険など、本人名義の財産を記載します。年金などの本人の収入と、医療費などの支出も記載します。それらの証明書類として、登記時事項証明書や通帳のコピー、保険証書や年金通知書のコピーなどを提出します。
通帳のコピーは、過去1年分程度が要求されます。これら証明書類があるかどうか、あらかじめ整理しておく必要があります。
申立人兼後見人候補者が、以前から、事実上本人の通帳などを管理していた場合、過去の通帳の記載でまとまった金額が出金されていると、使途を聞かれます。説明ができない出金が多いような場合には、後見人(管理者)として不適切と判断される可能性もあります。
また、総財産総が高額になる場合には、第三者(弁護士や司法書士など)を後見人に選任するか、または、候補者を後見人にしつつ、第三者(弁護士や司法書士など)を後見監督人に選任して、監督させる方向になります。
4.その他
その他、本人の戸籍謄本・住民票・後見登記されていないことの証明書、後見人候補者の住民票などが必要となります。これらは、申立書の作成を依頼する司法書士でも取得することができます。