生産緑地について(2020年解除問題)

高野義憲

「生産緑地」とは、農業を継続することを条件に、その指定を受けることで、固定資産税・都市計画税の軽減や、相続税の納税猶予制度などの軽減が受けられる制度です。

都市計画法により指定された、市街化区域内の、500㎡以上の農地について、指定を受けることができます。

①固都税の軽減 - 市街化調整区域の農地と同等の課税になります。
②相続税の納税猶予 - 終身営農することで、相続税の免除を受ける事ができます。

生産緑地の解除

農業を継続する者がいなくなり放置状態になっているため、生産緑地を解除して、宅地用地として売却したり、駐車場にしたり、コンビニ用地として賃貸するなどしたい場合。

その様な場合に、下記条件で解除する事が可能です。解除することで、農地以外の利用が可能になります。ただし、固定資産税・都市計画税は市街化区域標準で課税されることになります。

<解除できる条件>

①生産緑地指定後30年経過した場合
②主たる農業従事者が病気などで従事できなくなった場合 (医師の診断書必要)
③主たる農業従事者が死亡して営農する者がいなくなった場合

生産緑地制度の創設された1992年に多くの農地が生産緑地指定され、2022年に、それらが解除可能になる30年が経過します。最近、「2022年問題」として話題にもなっています。

生産緑地の解除 と 相続税納税猶予

生産緑地指定の解除は30年営農すれば可能になりますが、指定を受けた時に相続税の納税猶予を受けている場合、納税免除は終身営農が条件のため、注意が必要です (三大都市圏以外では、20年営農で免除されますが) 。

Aさんが先代から農地を相続した時に、生産緑地指定とともに相続税の納税猶予を受けた場合、後にAさんが亡くなると、猶予されていた相続税は全て免除されます。これに対し、Aさんが生きている間に、30年経過などで解除すると、猶予されていた相続税の全額と、さらに解除するまでの30数年分の利子税の全額を納税しなくてはいけなくなります。

相続税猶予をする場合、将来解除することで納税義務が生じる場合に備えて、当該土地に抵当権が設定されます。抵当権は、 「相続税及び利子税」 を担保するものとして、相続税額と利子税額が登記簿に記載されています。億単位の金額が記載されていますが、実際に滞納しているわけではありません。まだ納税義務は発生しておらず、終身営農すれば免除されるものです。免除前に解除した場合の担保として設定しています。

納税猶予申告をする際の書類一式の中に抵当権設定に関する書類もあり、申告書類の一つにすぎず担保を付ける書類という認識がされないまま提出していた方も多く、ある日土地の登記事項証明書を取ってびっくりされる方も多い様です。

生産緑地の解除の手続き

生産緑地の解除は、申告すればすぐにできるものではありません。まずは市の農業委員会に買取請求をします。市は1カ月以内に買い取るかどうか決定し、買い取らない場合、市が他の農業従事者に買取斡旋をします。3か月経っても買取希望の農業従事者が現れなければ、生産緑地指定が解除されます。

以上の様に、まずは市や農業従事者が買い取って農地として継続できる様にするのが原則で、それができない場合にやむを得ず解除するという形式です。ただし、市や農業従事者による買取りがなされる事はほとんど無い様です。

 

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